「上陸だぁ!!」


新しい島は・・・


「わお!!ジャングルーー!!!」


大きくて立派な森が広がっている。










Hart 13









突然森に入るのもどうかということになり、

しばらく島の海沿いを歩きまわってみることになった。


「すっげー森・・ケホ。」

「ペンギンどうした?さっきから咳してばっかりじゃねぇ?」

「よくわからん。風邪でもひいたかな。」


シャチさんの言うとおりだと思う。

それは私も気になっていた。


「熱はかります?」

「いや、いい。」


面倒くさいと温度計を押し戻されてしまったけれど・・

何か嫌な咳だし、心配だ。


「開けた土地にでたぞ!!ってげげ!!」

「先客か?!」


そこには家がたくさん建っている。

でも皆が驚いたのは村と言うよりこれかな。


「ローこれって・・」

「見たままだ。海賊船だな。」


派手な海賊船がある。


「落ち着いてるね。」

「先だろうが後だろうが関係ないだろ。」


微笑するところがかわいくないというか、

堂々として頼もしいんだけどね。


「・・ゴホっ。」

「ロー?」

「少し咳がでただけだ。」


ペンギンさんの咳といい・・船内で風邪がはやってしまったのだろうか。

実は船内の薬が不足しているので今回の島で薬、または薬の原料を調達するのも目的の一つだ。

舟に戻ったら、看護婦として船内の衛生管理をもう一度見直さないとね。

それぐらいにしか私は考えていなかった。








「海賊は帰りなさい!!」


村に行った途端、待ち構えていたのは女の人達の集団だった。

手には弓矢って結構な装備?!


「嫌われてますね。」

「珍しいことじゃねぇけどな。」


色々な街に立ちよっているから、海賊が嫌われるような集団だってことは

わかってるから今さら驚きはしないけど・・この力のいれようだ。

何か嫌なことがあったのかもしれない。

横のペンギンさんを見る。

顔が赤い。高い熱があるんじゃないだろうか。

やっぱり薬の原料、そして栄養のある食べ物が必要だ。


「もしかして!」

「おい、、おま・・ゲホゴホ。」

「あの海賊船が何かしたんですか?お困りならお話をお聞きします。」

「あなた・・女?!」

だけが女じゃなくってよ。」


チャイさんも私の横に立ってくれる。


「その装備のいれよう、そして女性だけの集団。

 何か困ったことがあった・・それはしかも最近のことじゃないかしら?」

チャイさんの言葉にぐっと言葉をつまらせた女の人達。

その途端


「ペンギン!!」


どさっとペンギンさんが倒れる。

猶予がない!


「お願いです。船員が病気なんです。」

「何があったかはしらないけど、私達はあなた達を傷つけたりしない。」

「道をあけてあげて。その人たちを運んであげましょう」


集団の戦闘に立っていた長身の人の声で私達は村にいれてもらえることになった。

長身の女性は村の女性の若きリーダーで、名前をさんと言った。








病室にはさんと看護をする人たち、私とローだけ。

他の船員は感染が疑われるので隣の別室にいることになっている。


「やはりゾルにかかっているわ。」

「ゾル?」


ペンギンさんを見て村の女医さんが出した診断結果は『ゾル』。


「ロー聞いたことある?」

「ない。特別な病気だろう。」

「聞いたことあるわけないわ。この病気は海賊たちが聖なる森を荒らした災厄なのよ。」

「ペンギンさんは森なんて」

「分かっているわ。」


さんが合図を送ると病室の奥のカーテンが開く。


「「!?」」


そこには多くの男性がベッドで苦しんでいる。


「男の人にだけ伝わっていくものなの。」


その言葉と共に隣から叫び声がして部屋を出れば、

船員が数名倒れている。

村の女性達がすぐさまタンカーで船員をベッドに運んでくれる。

それを見てローは何もいわず、厳しい視線をさんにむける。


「災厄というが、病に似た症状だ。何か手立てはないのか?」

「手立ては・・無いに等しい。」

「つまり、あるにはあるが、成功率が低いということか?」

「教えてください。」


もう一人の女の人が私達に何か古い巻物をもってきて広げる。


「 『聖なる森。清らかな乙女のみが入れる聖域。

  満月の夜、命は生まれ

  太陽と共にその命は輪廻する。』

これがこの村の伝説。巻物にはこうも書かれている。

 『聖域を侵すものあれば

  命の輪廻は閉ざされる。
  
  待ち受けるのは恐ろしき闇。』

詳しくはわからないけど、その闇というのが「ゾル」と私達が呼ぶこの病だと思うの。」


さんの話によると前回の満月の晩に海賊が上陸し、森に入ったらしい。


「貴方達は知らないようだけど、昔来た別の海賊の人が教えてくれた。

 この森には貴重な薬品がたくさんあるって・・たぶんあなた達の前に来た海賊達は

 それを狙ってきたのね。」

「今その海賊は・・?」

「海賊船にいる。全員がゾルにかかってね。」


ぞくりと寒気がする。


「ゾルは咳から始まり、熱が出て、呼吸がしづらくなる。

 熱が高熱になり・・まだ死に至った人はいないけど。」


嫌な胸騒ぎがした。

さっき・・


『・・ゴホっ。』

『ロー?』

『少し咳がでただけだ。』


「ローさっきの咳」


どさっと音がして、まるで時間が止まったようだった。


「ロー!!!」


今まで見たことのない苦しそうな表情のローが

倒れたのだった。










そして私の中の

運命の歯車がまた一つ

動き出そうとしていた。