全てが止まった気がした。
その瞳がすごく強くて、胸が熱い。
どうしようもない・・。
Hart 5
ふと目を覚ますとベッドで寝ていたことがわかった。
でもなんだか違う・・ここは・・。
「ようやく起きたか。」
「ロー・・キャプテン。」
見上げるとそこには・・ローがいた。
ということは?
「ここ・・もしかして。」
「人の部屋の壁で居眠りってのはどういうわけだ。」
読んでいた本を横におき、ローの手が頬にふれる。
本は少し厚みがあって、医学書だろうか。
小さい頃みたいでなんだか安心する。
でも・・なんで寝てたんだっけ?
【キャプテンの気にいりの女がいるってのは】
【!なんでもねぇからな!】
思い出した!
そうだった・・・・。
部屋に戻れば、なぜかが壁によりかかり、
小さくなって寝ている。
どういうわけだ??
ったく・・・。
男の部屋で寝ることの危険性もわからない。
島で教えてやるやつはいなかったのか。
いや、いても不愉快なだけか。
抱えてれば、軽い体。
ベッドに寝かせてやってから、医学書を手に取ることにした。
忘れるためには丁度いい。
抱えた温もりも手にかかった手触りのいい黒髪の感触も・・。
「ん・・。」
しばらくしてから目を覚ましたこいつは少しぼーっとしている。
「起きたか。」
「ロー・・キャプテン。」
舟に来た翌日から変わった呼び名。
当然だ。俺とこいつの関係は今は舟の船員と船長だ。
「ここ・・もしかして。」
「人の部屋の壁で寝るってのはどういうわけだ。」
思えば変わったものばかりか。
頬にふれる。少しうつろな瞳が高ぶらせる。
とものの数秒で突然びくっとこいつが震えた。
そして俺の手を自分の手の甲で押し返す。
何だ?
「大丈夫。ごめん、もう行くね。」
どこかふに落ちず、腕をつかんだ。
「大丈夫。ごめん、もう行くね。」
そう言った途端腕をつかまれてしまう。
「理由を話せ。」
「それは・・。」
あの時、ふいに聞き流せなかった。
ローがどう生きていたって、誰を選んでいたって関係ないはずなのに・・
ローの傍にいたいって気持ちが変わらなければ関係ないのに・・。
気持ちがざわついた。
だから帰ってこないローを待っていた。
待ちきれなくて、部屋にいって寝てしまったんだ。
安心するローの存在を感じられるこの部屋で・・・。
それはなんだか口にしづらい思いだ。
どうしてそうしまったのか自分でもわからない。
「それは・・・」
【今日は帰ってこないんじゃないか。】
私だってもうそんなに子どもじゃない。
それが意味するものも、帰ってきたローが何をしてきたのかも・・。
「なんでそんな顔をする。」
涙がこぼれそうになっている自分にいわれてから気付いた。
「触らないで。」
「は?」
口から出るのはうまく表現できない言葉ばかりだ。
誰かに触れていた手・・。誰かを愛した手!
「帰ってこないかと思ってた。」
「・・。」
「わからない、でもなんか嫌だ。
ごめんなさい。そんなこという資格ないのに。」
「触らないで。」
「は?」
涙目になるこいつ・・
どういうことだ。
何があった?
「帰ってこないかと思ってた。」
帰ってこない?俺が?
「・・。」
「わからない、でもなんか嫌だ。
ごめんなさい。そんなこという資格ないのに。」
つまりそれは
「俺が出かけた先を聞いたのか。」
下を向くこいつ、あぁそうかとわかった。
誰かが口をすべらせたのだろう。
昔からお互いビジネスで付き合ってた女のもとに情報を買いにいってきた。
男女の仲がないわけじゃない。
だが、金で情報を買うといったら、女は意味をわかったらしく
酒を飲み交わすことで承諾してくれた。
「」
名前を呼ぶと、涙をためた目が俺を見る。
その感情をこいつはわかってはいない。
だが・・勝手な期待だとしても
「!」
起きあがっていた人体を抱きしめる。
抱きしめられると途端にドキドキした。
違う、いつもの自分とは違う感情にどうしたらいいかわからない。
「嫌か。」
「?」
「俺が他の女に手をだすのが。」
「何でそんなこと」
・・
・・・・。
顔をあげた途端にふれた感触は優しく。
「俺はもう他の女に手を出す気はない。」
強い瞳に射抜かれる。
「だから聞かせろ。」
「。」
「俺のものになれ。」
涙がこぼれるのがわかった。
心が震えてる。あぁそうか。
これが人を好きになるってことなのか。
私はローが男の人として好きになっていたんだ。
こくりとうなずけばもう一度優しい感触が唇に届く。
こうして
私とローとの新しい関係が始まった。