それは一人の女性から始まる。
「いらっしゃいませってぇ!なんでここに?!」
「あら、いけないかしら?」
開店少し前、場内は騒然となる。
「・・・ついに!!ついにこの近藤に会いにきてくれ」
「んなわけねぇだろ!!このゴリラがぁ!!」
シルバーソウル始まって以来の大嵐の日の幕があく。
君に夢中 5
ん?なんか騒がしいな。
料理の仕込みを終えてはホールへと出た。
もちろんとして変装はばっちりである。
おや??あれは?
「相変わらず、めちゃくちゃな女。」
「・・・・。」
「あぁ、は初めてだよな?ありゃ新八の姉貴でゴリラに育てられた女だ。」
「近藤さんの惚れた女ぜよ。」
小指をたてる坂本、はーめんどうだねぇと頭をかく銀時の言葉にもは反応しない。
「おーいどうした??」
「え・・いや何でもないです。パワフルな人ですね。」
何で妙がここに?!
内心冷や汗のである。
「そろそろやめといてやれよ。」
「あぁ?!」
こいつ本当女じゃねぇ・・。
それでも嬉しそうな近藤の表情をみて土方はため息をはいた。
「いつものことでさぁ、ほっとけばいいんですよ。」
沖田は特に興味もなさそうに見つめている。
「それにしても・・本当に近藤さんに会いに来たわけじゃないんですか。」
「違うっていってんだろ・・ガキが。」
「ひっ!じゃなんで貴方がここに来てるんですか。」
涙ながらの山崎の言葉に一同は妙を見る。
そしてフフッと妙が笑う。
「誕生日の前祝いにバイトの休暇をもらって、お登勢さんから特別にここで一日好きに過ごしていいって許されたのよ。」
「ここを選ぶ時点でやはりわた」
「うざいんだよ!!」
ここで馬鹿馬鹿しいと高杉が遠くのソファに座る。
そしても調理場に戻ろうとした時
「つまりここで過ごすってことは・・誰かを選ぶってことでしょう?
姉上何を考えてるんですか!!」
新八の言葉にが反応する。妙・・誰を選ぶのかな??それは興味がある。
「ええ。そうなるわね。」
「おっ、なら俺か?」
「わしでよければ喜んでお相手するぜよ。」
「お前らふざけんな!お妙さんの相手は俺に決まってるだろう!!」
銀時も坂本も面白いから、近藤は愛のために妙の近くにいきたいのである。
「皆さんは行かないんですか?」
「近藤さんの女だろうが。」
「俺は興味ないでさぁ。」
「もちろん恐れ多いっす。」
「粗雑なおなごに興味はない。」
の問いに土方、沖田、山崎、桂が答える。
妙は綺麗だし、強いし魅力的だと思うんだけど・・。
てっきり全員でとり合うかと考えていたは首をかしげる。
「じゃぁ、君よろしくね。」
ふーんかぁ。
?
「わたじゃなくて俺――?!」
見ると妙はを見てにこにこ微笑んでいる。
もちろん全員が目を大きく見開いている。
「いや、えっと・・。」
は心に手をあててみる。
何か妙の嫌がることをしたのだろうか?
これは嫌がらせなのではないか??
しどろもどろである。
「そうそう、はい。」
「あっ、これ・・。」
「部屋に忘れて言ってたわよ。」
そうかそういえばとは思い出す。
ここに来る前に妙の部屋でレポート課題をやっていたのだ。
その時に忘れた携帯である。
「ありがとう。」
「もう、忘れ物よくするんだから。気をつけなさいね。」
「あぁ、ごめん。」
「それに・・ほら髪の毛。」
妙がの髪にふれる。
「よしできた。」
それを照れ臭そうには笑った。
「そう、これで一段とかっこよくなったわ。私がいなくてもきちんとしなきゃだめだよ。」
「・・妙にはかなわないね。」
二人の世界である。
「あの二人は恋人同士だったのか。」
「あいつかわいい顔してまさかのやりてだねぇ。しかも相手があのゴリラ女だったとは・・銀さんもびっくりだ。」
「えぇでもまさか局長の思い人が恋人って!!」
「はええ子じゃき。恋人の1人くらいいてもおかしくないぜよ。」
「・・・。」
「土方さん、灰落ちますぜ。」
はっと我にかえり土方が灰皿にたばこをこすりつける。
なんだ・・あいつ女がいたのかよ。いや、まぁ年齢的にいてもおかしくないがな。
「あー、まさかに女がいたなんて俺ショックでさぁ。」
「・・・・。」
そうかよ。
「ですし、きっと従順にあの女に従ってるんでさぁ。」
素直なあいつのことだ・・確かに想像がつく。
土方はそれを聞き眉間にしわをよせる。
「・・・・・。」
「あのの笑顔も何もかもあの女の全て一人占めですか。
たとえここでとてもなついていたってそれは所詮縦社会での建前ですよ、ねぇ、土方さん?」
『土方さん!』
土方は笑顔でよってくるを思い出す。
あれが建前で・・本当にそうしているのは目の前の女に・・?
なんか気にくわねぇ・・。
つうか総悟、さっきからうるせぇんだよ!!
「何がいいてぇ。」
「嫌ですぜぃ。なんでそんなに怖い顔するんです?」
ニヤリと沖田が笑う。やっぱこいつ自分で気づいていないだけで・・。
もちろん沖田はが女であることを知り、
更に妙と仲のよいことを大学で見ているので事情を知っている。
あえて土方をあおるセリフをはいたのだ。
もちろん真実を教えてやるつもりもない。この際苦しめ馬鹿土方くらいにしか考えていないのである。
「そんなの許されるかぁぁ!!」
二人の世界をぶち壊したのは無論、近藤である。
「へ??」
もようやく我に返る。
しまったいつものノリで!!
そう思ったのは後の祭りだった。
「・・勝負だぁ!!」
「なんでですかぁぁ!!」
戦いのゴングがこうして鳴り響いたのだった。