「お腹すいてるんですよね。よかったら、どうぞ。」
目の前にあるにぎりに手を伸ばす。
君にとどけ 7
まじめんどくせぇ!!
眠い上に腹減った・・。
最近遅刻が多いせいで、サカズキの野郎に目をつけられたから仕方なく
朝っぱらから登校になった。
『次回の試験の結果が惨敗だった場合、まぁわかっとるなぁ?』
あたしだけじゃなく、うちのう奴等まであいつにどうにかされるのは気に食わない。
「くそ・・。」
久々に早く来たおかげで十分な飯食べれなかった・・。
ぐぅ・・。
腹までなるし・・。
ん?
気付けば横に座った女が鞄をあさっている。
きれいな女だ。
こいつ・・確か・・。
あたしが考えている間に女は目的のものを見つけたようで
満足そうに笑うとそれをあたしの方にむける。
「どうぞ。」
銀色の三角形の包み紙?
「お腹すいてるんですよね。よかったらどうぞ。」
「あたしに?」
「はい。」
おいおい、見知らぬ相手に食べもの渡すってどんな女だ。
怪訝そうなあたしを見て、女が苦笑する。
「って知らない相手からもらったものなんて食べれない・・ですよね。
すみません。」
いや、謝らないでいいだろ。変な女・・。
「でも、今日テストですし、食べたほうがいいですよ。」
そう言われてよく見れば同じ服装ってことは同じ高校の生徒か。
「おにぎりです。中身はおかか、鮭ですよ。」
言われると余計腹がへる。
いやでも・・。
差し出された握り飯に手がのびてしまった。
食べてみると結構うまい。
うまい。
うん、うまい。
「お茶もありますよ。」
「サンキュ!」
ん?
「げっ!」
気付けば全部食べてしまった。しかも茶までもらった。
やべ、と顔をあげれば怒ってるかと思いきや女は笑っている。
「悪かったよ・・全部食べちまって。」
「違いますよ。でも、気に障ったらすみません。
ただ、そんなにおいしそうに食べていただけるなら嬉しいなって。
あと、もっと作ればよかったなと思っただけです。」
その顔は・・女のあたしもなんだか気恥しくなるような表情。
「お前・・馬鹿じゃねぇえの。」
「すみません。」
つったくいい奴にもほどがある。
こんな女あの学校にいたか?
あっ!
「もしかして、お前れいの転校生か?」
「れいの?まぁ、はい、そうですが・・何か。」
「いや、何も。」
美人で性格も悪くねえ転校生が入ってきたって話は聞いていた。
こいつがそうだったのか。
その後も適度に会話をしたが、別段悪い印象もなく、
『お人よしで、居心地は悪くない奴』
それがあたしがこいつにいだいた感情だった。
バス停から降りてからも自然に一緒に学校に行くことになる。
玄関になって、そういや名前も言ってなかったと思う。
「おい。」
「はい?」
正直たまたま出会っただけのこいつと
別に自己紹介なんざしなくていいはずなんだが、
口が勝手に動いていた。
「お前名前は?」
「・です。」
「あたしはジュエリー・ボニー。」
「ボニ―さん、よろしくお願いします。」
「よろしくって何をだよ。お前ってつくづく変な奴。」
ニコニコしているこいつを見て気分が良い。
あぁそうか。
あたしこいつが気にいったのか。
「!」
「はい!」
「握り飯、今度は梅ぼしあたり期待してるからな。」
「喜んで。」
こうしてあたしたちは出会い、
友達ってやつになった。