取り調べして後味悪いなんざ久々で・・。
まだまだ俺は魔王までの道のりは遠いんでさぁ。
こういう時は昼寝と思うとヘタレに蹴られる。
「見回り行くぞ。」
「土方さんひどいでさぁ。
俺は今人生という道の見回りをしてこの先の道を見定めていたとこで。」
「無駄口たたかず行け。」
つったくいつもなら怒鳴り散らす癖に・・調子くるうってんだ。
Tomorrow 10
先日、女中として入ったさんの取り調べをした。
彼女はもちろん白で、いやまぁ形としては白か保留ですが・・。
わかっていても取り調べをしないわけにはいかない。
他の隊士にも示しがつかないわけで。
もちろん暴力をふるったりしたわけではないが、
体のしびれ、自白剤ぐらいはうって話させた。
あーあ・・嫌われましたかねぃ。
さんはもちろん屯所に顔をださなくなった。
以前の屯所に戻っただけなのに、どうもさびしい感覚がするのはさんが
自分達のどこか足りない部分を癒していた力だろうとわかる。
懐かしい感覚だった。
昔姉さんと一緒にいた時の感覚に似ていた。
温かくて・・
忘れていた何か。
「何だ。」
「別に、土方さんをヘタレだなんて思ってやせんぜ。」
「思ってたんだろうが!つったく・・。」
切れ悪いこの人も俺と同じような気持ちをいだいてるんですかね。
こういう所はわかりやすいってんだ。
それともそんだけこの人にとってはショックだったのか。
さんが来る前の元に戻っただけだってのに・・。
「あ・・・・。」
「総悟!」
「ってなんで隠れるんですかぃ?」
「何となくだ。」
いやヘタレすぎでさぁ・・。
角をまがった近くの菓子屋の軒先にさんと子どもがいた。
どうやら一人のガキが泣いているらしい。
「なのにこいつらが、あんなのはチンピラだって・・
刀なんてもう古いって言うから・・。」
「だって廃刀令でてるんだぜ。そのうちサムライなんていなくなる。」
チンピラ?
刀って言わずもがな俺達のことじゃないんですかぃ??
あー切り捨てたいなんて思って・・しやせんぜ。
子どもに何がわかるってんだ。
「素敵な夢ね。」
「え?」
「真選組はね、この江戸を守るために一生懸命働く組織よ。
少し怖かったりやりすぎて反感を買ってしまうこともあけれど・・
とてもまっすぐで素敵な人達よ。」
さん・・あんた本当にお人よしでさぁ。
土方さんをちらりとみると目をつむって話に聞き入ってる。
「あのね、剣術を学ぶことはね技術もだけど心をきたえることだとお姉さんは思うわ。」
「「「心?」」」
「礼儀、心のあり方・・本当に色々なことが学べるの。」
「姉ちゃん・・それ本当?」
「私も剣術を学んでるのよ。あと少しだけ真選組の人たちとお話ししたこともある。
その私が言ってるのだから、今のは全部本当よ。」
「そうか・・俺、頑張る!!」
「俺も剣術やってみようかな。」
「ずるいぜ!俺も!!」
「じゃぁね。」
どうやらガキとさんの話は終わったわけで・・そこでしまったと思っても
後の祭り。
「あぁ!!真選組!!」
「本物だぁ!!」
ガキの騒ぎたてで・・仕方なく俺と土方さんが出ていく。
さんは真直ぐたって俺と土方さんを見た。
そしていつもより少し困った笑みがその表情にはうかんでいた。
「お久しぶりです。」
「あぁ・・。」
何を言っていいかわからず黙っていると珍しく土方さんがしゃべりだした。
「元気そうだな。」
「それなりに。」
「俺達は後悔も悪かったとも思ってない。」
「えぇ、それでいいと思っています。」
続く沈黙になんだか俺は苛々した。
「あんた馬鹿ですかい?」
「え?」
「文句の1つくらいいったらどうです?」
さんはうーんと考えて苦笑した。
「仕事は首だと思って行かなかったんです。ごめんなさい。」
だから何で・・
「私も悪いことをされたとか思っていません。
だからそんな顔・・しないでくださいね。」
何で・・俺達を責めないんだ。
今の俺は目を見開いていただろう。
きっと土方さんも同じだ。
「今までお世話になりました。失礼します。」
そう言って俺達に背をむけるさんに俺は走っていた。
「逃げるなんてずるいですぜ。」
「逃げる・・?」
「誰も首だなんて言っちゃいねぇ。」
「でも・・。」
「さぼった分働いてもらわないと困りますぜぃ。」
「総悟君・・?」
何勝手なこと言ってるんだとか自分でわかってる。
土方さんが俺をみてため息をはいた。
「、だいたいお前に重要な情報は預けてねぇ。」
「はい。」
「これからもそれは変わらない。」
「はい。」
「茶いれるのが下手な奴らばかりで苛々してんだよ。」
「・・はい?」
「明日はきちんと来い。」
「え?」
「見回りついでに家まで送ってやる。」
「土方さんにしてはいい案でさぁ。
こりゃ明日は槍でも降るか。むしろ土方さんにだけ降れぃ!!」
「降るか!!文句あんならお前は帰れ!!」
そうそう、これがいつもの調子でさぁ。
「ふふっ。」
そうその笑顔もさん、あんたのいつもの調子でさぁ。
予想通り、万事屋に行くとあの
チャイナ娘と眼鏡と旦那と
言い合いの騒動になった。
こうして俺達の日常が戻る。
だが・・この日常は
そう長く続かなかった。