大江戸ストアの帰り道に私はその人と出会った。
詳しく言えば、そのものと人に出会った。
Tomorrow8
冷静に考えて・・。
あれは、あの後ろ姿は私の世界にいた『おばけの〇ちゃん』ではないだろうか。
唾を飲み込み私は〇ちゃんもどきを追うことにした。
しばらく行くと橋の向こうに消えていく。
そして〇ちゃんもどきは止まった。
『して、なぜ追いかけてくる』
看板で話してる!!
ていうか〇ちゃんじゃない!!
『なぜためいき?』
「いえ、何でもないんです。」
「エリザベスどうした?帰ってきたのか??」
私が戻りかけると背後で男の人の声がした。
長い髪がこんなに似合うなんてモデルみたいな人だ・・。
「あなたは?」
「私は・・あのと言います。諸事情でそこの着ぐるみさんについてきたもので」
見惚れてしまってなんだか恥ずかしい。
私の表情をみてその人はふっと笑って
「着ぐるみではない。エリザベスだよ。」
と言った。
いやそこなのかなあ・・。
あれ??
「手、怪我してますよ?」
その人の手から血がでている。何の傷だろう。
「あぁ、これくらいなら平気さ。怪我は慣れている。」
いやいや、まだ血が流れてますけど・・・。
ハンカチをだしてその人に近づく。
「綺麗なハンカチが汚れるぞ。」
「ハンカチは飾り物ではありません。小さな怪我も馬鹿にすると化膿して悪化しますよ。
それにエリザベスさんの白い体に血がついたら大変でしょう。」
そう言うと、その人はもう何も言わず手をだして優しい表情で微笑んでくれた。
「ありがとう。」
「いえ、どういたしまして。」
「そのお礼といってはなんだが、少し話をしないか。」
「話ですか?」
「あぁ。君がエリザベスを追いかけた理由などを。」
ぐっと言葉につまってしまう。
「信じられない話ですよ・・・?」
「先ほどのため息といい、気になってしまってね。
そのような話には慣れているから大丈夫だ。」
私は自分の今までの経緯を話した。
「そうか。しかし天人というわけではないのだな。」
「何度も聞かれるんですが、その人たちとは違います。」
むしろそれなら故郷に帰れる・・。
違うからこそ帰れない。
「そんな暗い顔をしないでくれ。私にとっては重要な部分だったのだ。
あなたを疑ったわけではない。」
疑って私が傷ついたのだと思ったのかな。
違うんだけど・・。優しい人だ。
「ありがとうございます。その優しいんですね。」
「どうだろう。貴方が優しい気持ちにさせてくれるからではないか。」
天然だ!!絶対この人天然にちがいない・・。
「顔が赤いが・・どうかしたのか。」
「いえ、なんでもないです。」
その時なにやら騒がしい音がした。
この声は・・
「まだあきらめていなかったか。」
「?」
「そろそろ行かねばなるまい。」
ドゴン!!!
白煙と共に、爆風がふきとばされてしまう。
「痛たた・・。」
「こんなとこでくつろぐとは余裕じゃねぇか。桂よ。」
「まったく・・無粋なまねをしてくれる。」
そこにいたのは新選組のみなさんで
ぎろりと睨む土方さんの視線に
私は固まってしまった。