「うーん!!」
大きく背伸びをする。
青い空を見上げて本当に終わったのだと実感した。
「さて、行くかな。」
病院の玄関をくぐり私はノックをして病室に入った。
Venus 9
「9代目お加減はいかがですか。」
「、よく来たね。」
優しい笑顔が迎えてくれる。
今回の死闘で9代目は重傷をおった。
早い処置が功をそうして大分回復して本当に良かったと思う。
「全て終わりましたね。大変な戦いでした。」
9代目は少し悲しそうに微笑む。
その後、公に沢田綱吉が10代目候補となったことがボンゴレや他マフィアに知られることとなり、
逆にヴァリアーは今回の件の処置としてしばらくの間謹慎処分を受けることとなったと聞いた。
「。」
「はい。」
「すまなかった。」
「9代目・・・。」
「私はお前に隠し、偽ってきた。失われた記憶を・・。」
あぁ、やはりそうなのかと思う。
今回の戦いで私は失われた記憶の断片を見てきた。
断片といってもゆりかごの戦いに赴くときに交わしたXANXUSとのやりとり、
9代目とXANXUSとの戦いの後をぼんやりとくらいだけれど。
そして・・ヴァリアー上層部の人間へのよくわからない思いがあるということだ。
「今回の戦いでお前が何かしら思い出したことを・・ディーノ君やリボーンから聞いたよ。」
思い出したことを口には出していないはずなのに・・
さすがディーノさんとリボーンさんだ。
「思い出しただなんて言えるほどのことは思い出していません。
本当に1つか2つの数秒の記憶と・・絆のような感情です。」
「そうか。それは間違いではない。真実を・・聞きたいかね?」
以前なら私は首をふっただろう。でももう断片でも思い出してしまったのだ。
そこから目をそらすことはできない。
「はい。」
「私の知る話だから詳細なものではないがそれでいいかね。」
「はい。お願いいたします。」
「お前の父と母の話は偽りではない。」
父と母は日本人で、母の直系の娘として私がリング守護者となったこと、
父はボンゴレの幹部だったという話だ。
「ただ少しだけ違う所は、お前の父親がヴァリアーの幹部であったということだ。」
「ヴァリアーの幹部・・・ですか。」
なんだか父親へのイメージが壊れる。
写真だとすごく優しそうに笑ってたから。
「心配しなくて大丈夫だ。お前の父親は任務に対しては厳しいが、
普段はおだやかでとても優しい人物だった。
どちらかといえばヴァリアーにいるのが似合わない男だった。」
よかった。
「話を戻そう。お前は小さい頃日本で過ごした記憶があるだろう。」
「はい。母親と過ごしました。母は私に戦い方を教えてくれました。
そしてこのリングのつかい方も。」
「そうだ。そして、お前は母の死から記憶がないのだろう。」
「そうです。」
「その後、お前はイタリアに渡った。」
記憶がないのは確かにそこからだ。記憶を失って私はイタリアにいて驚いたのだ。
「そしてヴァリアーの父の元へと引き取られた。」
「え?」
「そこでお前はゆりかごまでの2年の時を過ごしたのだよ。」
「それは・・」
「正確に言えば・・お前の父親はお前を引き取って半年で亡くなってしまった。
対立していたマフィアに撃たれ・・殉職だった。」
父親の死が記憶にないというのはかなり衝撃だ。
だが思い出せないのだから仕方ない・・。
でも半年・・?
じゃあと残りの1年半は・・。
「1年半は・・ヴァリアーの上層部と共にお前は生活していたのだよ。」
「!!」
「私が引き取るといったんだが・・ヴァリアー側から拒否されてね。
それはまた、、お前の意志でもあった。」
私がヴァリアーにいることを望んだ?
あの人たちといることを望んだの??
「これが証拠というか・・その頃の写真だ。」
9代目は使い古した手帳の中から一枚の写真を取り出す。
そこには、先日出会ったヴァリアーの昔の姿があった。
違うのは小さな少女がその真ん中で幸せそうに微笑んでいること・・・。
『 ね!!』
『 勝手にし 』
「なにか思い出したかね。」
「いえ・・。」
一瞬何かが頭をよぎった気がしたけどよくわからない。
けれど確実にこの少女は私だ。
母さんの形見のリングも首からさげている。
「ゆりかごの戦いのとき、お前は参加していなかった。
しかし、自分の意志で来たお前はある光景をみて発狂して倒れた・・。」
「ある光景・・?それはXANXUSの凍りついた姿ですか。」
その言葉に9代目はとても驚く。
「今回10代目が使用した技を見た時、ひどく胸が痛みました。
その理由はよくわかりませんでしたがおそらく過去のことを、
心のどこかで思い出したのかもしれません。」
「その通りだろう。
数日後、目を覚ましたお前はヴァリヤーで過ごした2年間を忘れていた。」
「そうだったんですか・・。」
XANXUSやヴァリアーと交わした言葉を思いだす。
『久しぶりだな。』
『ふざけるなはお前だ。』
『ふっ、やはりお前はだろ。』
『何も覚えてないようだな。』
『何の話ですか・・・?』
『あの老いぼれに、記憶でもいじられたか。』
『何を!!』
『今は、まぁいい。』
『ルール違反はだめだぜ〜・・。』
『、思い出しかけてるんだろ。なら君はこちらの人間のはずだ。』
全てつじつまがあう。
それと共に・・どうしようもない感覚が自分を支配する。
9代目にこれだけの重傷をおわせ、今回の不快な戦いをしかけたのはヴァリアーだ。
今も許せない。
だけど・・あれから8年が経過しても彼らは私を覚えていた。
あの面々がだ・・。
忘れている私は、私はどうすればいいんだ。
「・・。」
「大丈夫です。少し混乱しているみたいで。
でもただ一つだけわかることは・・9代目が私を護っていてくれたことです。
記憶を失ってから、私はボンゴレの門外顧問チームとして過ごしました。
色々な任務があったけど、温かく優しいメンバーの中でおだやかに過ごしてきました。
とてもとても感謝しています。
リングのこの鎖だって・・私がヴァリアーに戻らないように護ってくれてたんですよね。
ありがとうございます。」
「お前は本当に・・優しい子だ。」
9代目が涙を流したせいで私も泣いてしまった。
今どうすればいいか。
どうしたいか。
そう私はそれを考えて進めばいい。