「ティキ、ありがとう。」
その笑顔が傷ついたものだと俺は知っている。
だがあそこでああ言ったのを、俺は後悔などしていない。
『ユウ』とその名を呼ぶ時、の彼女の懐かしく幸せそうな顔を何度も見てきて
彼女にとってその人物が特別だったことに気付いてしまったから。
今はどうかわからない。けれど俺はを手放すつもりなんてない。
Wheel 3
そろそろ学園の帰りだと知って、仕事帰りに俺は車を走らせた。
学園のかわいいこ、リナリーっていったか??
その子に聞くと、もう生徒は全員帰宅したとかで周りを探し、俺は
海にたどりついた。そしてそこでを見つける。
その光景はひどく不愉快なもので、俺は急いでの名を呼ぶ。
「!」
声をかけられてはっとして向き直る。
そしてこっちをみる男に苛々した。
近づいて行ったのは男の方で、ぶん殴ってやりたい衝動にかられる。
でもそれはに嫌われるだろうからやめて・・。
「今日、本家に帰るんだろ。乗せてくよ。」
俺は笑みをうかべてその二人に近づいて行った。
は居心地が悪そうに俺を見た後は視線を下にむけていた。
そしての隣の男は、俺に強い視線を向けたままだ。
「それ学園の奴?」
「・・・・。」
その視線を受けて立ち、俺もそいつを睨みつけた。
「そうだよ。昔同じ施設にいたの。」
は俺達の表情には気付かないだろう。
下を向いたまま話している。
「ふ〜ん。初めまして、俺の名前はティキ・ミック。あんたは?」
「・・・・神田ユウ。」
その名前に・・俺は笑いそうになった。
なんていう偶然だ。
俺の視線が挑発的なものにかわったのを見て、神田ユウは俺を更に睨みつける。
「その名前・・そうか。じゃぁ言っとくか。」
下をむいて首をふるに多少の怒りを覚える。
それはどういう意味だ?
なぁ?
俺はやめない。
お前を離さない。
「俺、の許嫁だから。以後よろしく。、行こう。」
手をさしのべる。
だが、その手をはすぐ握らない。
「すぐ行くから・・先に行ってて。」
仕方ないか・・。
まぁここまで言ったのだから、もう何もできないだろう。
「了解しました。お姫様。」
俺は先に車に戻る。
数分後が戻ってきて助手席に座る。
隠しているが涙を流したのが分かる。
「。」
「・・・?!」
ふいに抱き寄せて、その唇に自分の唇をよせた。
「ティキ・・。」
「これで今日のことはなしにする。」
暗にあいつと二人にもうなるなというメッセージを含めて。
本家に向かうまでは何も話してこなかった。