神田がそういう人間だとは知っていた。
力がなく甘さをもちこむ人間が嫌いなこと、容赦がないこと。
けれどそういうことだけで動ける人間ではないと分かってる。
出会ってからまだ2年しかたっていないけれど・・。
「なにかありましたか?」
「いえ!大丈夫です。」
目の前のファインダーに心配されて私は微笑む。
With 4
任務自体はすごく簡単な任務で、イノセンスは外れだった。
エクソシストを1名しか派遣しないのだからこれくらいかな。
任務終了後の定期連絡をコムイさんに入れるとコムイさんから意外な言葉が返ってきた。
「そうそう。ちゃん途中下車してマテールに行ってくれる。」
「あれ?そこって確か・・。」
「そう、神田くんとアレン君が任務に言った場所なんだけどさ〜、色々わけありでね。
もうすこし任務かかりそうなんだ。戦闘自体はないんだけどね。」
戦闘が終わったのにイノセンスを回収できない??どういう意味だろう。
「しかも神田君が大けがしたし、すんなりイノセンスをゲットして帰れないから、
苛々してるみたいでさ。アレン君も最初の任務で結構まいってるみたいだし。」
最初の出会いとこないだのことで、神田とアレンが気が合わないとは思っていた。
「私が行っても何もできないですよ。」
数日前の神田とのやりとりを思い出す。そういうとコムイさんが電話ごしに
少し笑ったのがわかった。
「大丈夫だよ。」
「え?」
「ちゃんの笑顔は太陽だからね。」
私の生きた世界で、一昔前のセリフみたいなことをコムイさんが、自信満々に言うから、
噴き出して笑ってしまった。めそめそしてても仕方ない・・か!
「わかりました。」
通話を切って、ファインダーにつげ、電車を途中下車する。
そしてコムイさんに言われた病室を訪ねた。
「・・・・。」
ノックして返事がないので、静かにドアをあけ室内にはいる。
するとそこには眠っている神田と、点滴の台があった。
布団からでている肩と胸の上あたりに包帯が見える。
「無事でよかった。」
神田が起きていたら怒られるようなセリフをはく。
でも本当にそう思う。大けがした仲間を見るたび思うこと。
平和な世界からきた私には、いつになっても慣れない光景だから。
傷つく仲間、もう会えなくなる仲間・・・。
そっとベッドの横の床に膝をつき神田の近くに寄り添う。
「神田、私は苦しいよ。」
死なないと言われている、でも心配で、胸が痛い。
「代えの命なんてやっぱりないんだよ・・。」
目から涙がこぼれた。すると
「・・人の枕元でピーピー泣くな。」
ゆっくりと目をあけ神田が私を見る。
まさか起きてるとは思わなくてすごく驚いた私に、神田はため息をついた。
「縁起でもねぇ。」
舌打ちをしているのに、その指が私の頬にふれ涙をぬぐった。
「優しいね。」
「黙ってろ。寝る。」
神田は視線をはずし目を再びつむってしまった。
「もう少しここにいていい。」
「・・・好きにしろ。」
「ありがとう。」
私はベッドに右ほおをのせ、目をつむって時間を過ごした。
窓をみると夕方で、自分がそのまま眠ってしまったことに気付く。
ずっとここにいるわけにはいかないだろう。
それに、もう一人会わねばならない人物がいる。
「お帰りはまだ言わないよ。ホームで待ってるから。」
寝ているであろう彼に声をかけ私は病室をでて、アレンのもとに向かった。
「綺麗な歌声ね。」
そう声をかけるとつっぷしていたアレンが私を見た。
「・・何でここに?」
「アレンに会いに来たに決まってるでしょ。」
そういうとアレンは切なそうに笑った。
任務の内容と今の現状を聞いていることを伝えるとアレンは苦笑する。
「救済か破壊か。」
「え?」
「は、エクソシストはこのどちらだと思いますか。」
その問いはとてもとても私には重い言葉だった。
目をつむって考える。
「私は、どっちでもいい・・かな。」
アレンが目を少し見開き私を見つめる。
「私は自分の大切な人を守りたいから戦うの。」
あの日、イノセンスの適合者だとわかった日決めたこと。
「は強いですね。」
「私が強いなら、迷って、考えられるアレンも強いよ。」
「僕は・・・。」
ぎゅっとアレンを前から抱きしめた。
「結局は心のもちようだよ。アレンはどちらがいい?どちらを選びたい?」
「。僕は・・。」
「決めたら、しっかり進めばいい。」
「僕は・・歩き続けます。」
「頑張って。」
腕を緩めるとアレンの目からは涙がこぼれていた。
でもその表情は優しく笑っている。
「、ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
アレンの横でしばらく歌を聞いていた。
優しい、優しい歌に昔を思い出す。
自分も強くなったものだなと・・思った。
『私は戦う。』
懐かしい自分を思い出した。