ここはどこだろう?
ふいに目を覚ますとそこには
「?!」
女の子が横になって寝ていた。とっても可愛い子だなぁ。
そう思うと同時にこみあげる思い・・。
もう何度この気持ちを経験しただろう。
何がそうさせるのか・・わからない。
初めて会うのに、そのはずなのに・・わからない。
「ん・・あっ、おはよう。」
「お・・はよう。」
んーと背伸びをし、私を見上げる少女。
「あっ!自己紹介まだだったよね。僕はロード。」
ロード・・・?
どこかで聞いた名前だ。
「私は・・。」
「えへ!かわいいね。気にいったv」
ぎゅっと抱きつく少女に戸惑った。でも一番戸惑ったのは、
この胸にわきあがる感情・・そしてロードを抱きしめ返す。
体が勝手に動いていた。
With 7
ロードはノアという一族の一人らしい。
ノアの一族というのは千年伯爵はじめ、黒の教団の敵だとわかっていた。
本当なら、私は戦わないといけないのだろう。
だがなぜか戦う気がおきなかった。
ロードが人間だから?
もちろんそれもある。
実際に見たことじゃないから、信じられない?
もちろんそれもある。
でも・・それだけじゃない。
「混乱、してるんだね。」
ロードが私を見上げて微笑した。
「行こう。千年公の口からしか伝えられないこともあるんだ。」
そう促されて、ロードは私の手をひき部屋を出た。
着いたドアをあけるとその奥には、千年伯爵が座っている。
編物の手をとめ、こちらを見る。
「おはようございます、。」
「私の・・名前。」
「知っていますよ。教団以外の場所でならあなたがしていたことも、知っています。」
胸の中央付近に手をあてる。
イノセンス・・・
ちがう・・・。
だめだ・・!
戦わないといけないはず
なのに・・。
私が顔をあげると千年伯爵は私をただ無言で見つめていた。
「戦う気がうまくおきないのでしょう?」
「違っ・・。」
苦しい。あの日戦うと誓ったのに・・なぜこんな気持ちになるんだろう。
「貴方は、私たちと一部が同族ですからね。」
「?!」
その言葉に頭が真っ白になる。
「正確に言えば、魂の一部ですね。」
「そんなわけない!」
言っている意味がわからない。
「お帰りなさい、歌姫。」
「歌姫・・?」
「そして我々の花嫁。」
その声がとても優しくて、なぜか私の目から涙がこぼれた。
ぎゅっとロードが私に抱きつく。
ロードの目からも涙がこぼれていた。
「ずっと僕、待ってたんだよ。」
その言葉に胸が痛んだ。
だいたいの話しを聞いて、わかった。
その昔、ノアの一族が大事にしていた女性がいた。
その女性は「歌姫」、そして「ノアの花嫁」と呼ばれる女性だった。
ノアでなく、ノアに愛され能力を分け与えられた女性だったと聞いた。
ノアでない彼女は完全な転生はできない。
そこまで話したところで私は話しをさえぎった。
私はこの世界の人間ではないと説明すると、だからこそなのかもしれないと話した。
「おかしいと思いませんかv」
「え?」
「吾輩を見て攻撃しないあなたにイノセンスが反応しないことを。」
「それは・・。」
伯爵に協力をしているわけではない、しかし攻撃する気さへおきない私に
本来ならイノセンスは制裁を加えるはずだ。
咎落ち・・
知っている。
私は痛いほど、それを知っている。
「そのイノセンスはかつて彼女と適合してしまったイノセンスなのです。」
「・・・。」
「正確には彼女の魂とダークマター、イノセンスの複合体なのです。」
あぁ、だから私のイノセンスだけあんなにおかしいのかと思い知らされた。
へブラスカは知っていたのだろうか。
『光と影をもつイノセンス。すべての運命を切り開くものとなるだろう・・。』
「それにあなたも感じるのでしょう。我々との絆を。」
確かにそうだ・・だけど、
そうだとしても・・。
「そうだとしても私はエクソシストです・・そう歩むと決めたんです!」
「今はそれでかまいませんよ。そうそう、お茶にしましょう。」
「え・・・?」
あっけない返事、そして私は拍子ぬけしてしまった。
「ロード、ティキぽんも呼んできてください。」
「はーい!あとでね!!」
それからはなぜかお茶をして、色々聞かれた。
もちろん私情以外は話さない。教団の内部なんてもってのほかだ。
しばらくして、私は無理だとはわかっていながらも
思い切って口にした。
「あの、ここから出ることはだめなんでしょうか。」
もちろん一気に沈黙がおりる。
とてもまぬけな質問だ。
捕まった人間が捕まったものにここから出られないかと聞くのだから。
「それは」
「だめ!!だめに決まってるじゃん!!!」
千年伯爵が答を言う前にロードが私を見る。
そのあまりの迫力に驚いてしまう。
「はあそこに戻りたいわけ?」
先ほどまで飄々としていたティキが少し真剣なまなざしで見てくる。
「うん。少なくとも、6月18日にはあの街に戻りたい。」
ここはゆずりたくない。戻らないと間に合わない。
とても・・大切な日なのだ。
「2週間ですか・・そうですね。いいですよv」
「「!!」」
きっとロードが千年伯爵を睨みつけ、
あまりの意外な言葉にティキは持っていたフォークを落とした。
「その代わり、それまではここで暮らすこと。外出は許しません。」
「・・わかりました。保身以外はイノセンスも使用しません。約束します。」
これがお互いの最大の譲歩だろうと思った。
「ありがとう・・・伯爵。」
驚くほど素直に呼べる。
魂か・・信じないけれど、信じるしかない。
こうして私のノアとの不思議な生活が始まった。