「え〜!!なんでこんな時に学校行かなきゃいけないのさ!!」

「ロード、待ってるから。」

「絶対だよ。逃げたら許さないからね。」


千年公にさとされ、を名残惜しく見つめてロードは学校に登校していく。


「本当惚れてるねぇ。」

「可愛がってくれる女性が少ないからじゃないかな。

 ルルベルさんはちょっと厳しそうだし。」


苦笑したを見つめる。

初日から一週間がたち、はこの環境に慣れつつあった。

親しみを感じ、べったりのロードに対して宿題を見て、遊びに付き合う、

話しを聞く・・。ノアではない、でもノアの一族のようだ。

これが歌姫、ノアの花嫁の称号をもつ人間のなせる業か。

まぁどうでもいいけど。


「なぁ、。」

「たまには俺と遊ばない?」

「それではティキ、お願いします。」


笑顔を向けられて、満ち足りた気持ちになる。








With 8








遊ぶといっても特になにかあるわけではない。

の外出は禁止されているわけで、お茶をのみながら、の世界の話を聞いたり、

ノアである俺自身の話をしたりした。

の世界は面白い。俺たちには信じられない世界が広がっている。

ちなみに、のいた世界の日本という国はこの世界から比べたら争いがない。

殺し合う世界ではないらしい。


「今とだいぶ違うな。最初戸惑ったろ?」

「そうだね。悪魔を狩るのさへ・・嫌だったから。」


兵器だが自我のある存在、どこまでを生きたものとしてとらえるか

難しいと感じたこと、でも今は仲間のために戦うことを決めたことを話してくれた。

話しの最中は色々思い出すことがあるせいか、笑顔だけじゃないが見れる。

あっという間に時間が過ぎる。

もっと見ていたい。


「たっだいまーー!!」

「!!ロード・・首痛い。」


突然抱きついてきたロードには苦笑する。

俺との二人の時間は初日はそんなこんな感じで終わってしまった。







次の日もお茶を飲む。

そんな時


「ティキにお願いがあるんだけど。」

「何?」


が願いを言うなど今までなくて俺は驚く。

何の願いだ?

うーんと考えて彼女は申し訳なさそうに頼みを言った。


「ロードが眠っちゃった後に、眠れない時本を読みたいなぁって思って。」

「本?」

「お勧めの本とかあったら、貸してほしいなって思うんだ。

 本の内容はなんでもいいから。」

「・・・・・・。」

「あっ!無理だったらいいんだけど。」

「いや、そういうわけじゃなくて・・・。そうだな、考えとく。」

「ありがとう。」


別にだめなわけじゃない。

願いが本を貸してほしいなんてとても簡単なものだったこと、

そして自分が本など全く読まないから何を薦めたらいいかわからなかっただけだ。


「ロードの部屋の本はもう全部読んじゃったんだ。」

「あれをか?」

「うん。面白いものが結構あったよ。」


千年公が与えてロードが読まず、新品同様の本たち。

難しいものもあると聞いたような・・。

は何冊か面白い本を紹介し、俺に教えてくれる。

本は嫌いだが、に解説してもらいながら色々な話しをするのは面白いかもしれない。

そう思った。







その夜千年公に相談するとしばし考えて、棚の本を何冊か貸してくれた。

分厚い本が数冊。難しそうなタイトルが並ぶ・・。


は賢いですね。先ほどティキぽんがから話しをされたという本は、

 吾輩のお勧めの本です。しかし、中々難しいものなんですよ。」


思えばロードの宿題も科学や数学を中心にスラスラと解き、教えていたっけ。


「本が好きとは・・そっくりですね。」


千年公の表情が優しくなるのを俺は見逃さない。

記憶がはっきりしている分、千年公にとっては昔の歌姫と重なる部分が多いのだろう。


、似てる?」

「似てる部分は多いです。あの笑顔と万人への優しさ、強い瞳。

 でも、歌姫はもう少し淑女らしさがありました。表情もあんなに代わりません。」

「そっすか。」


俺はのそういう所は嫌いじゃない。むしろ好意的に受け止めてる。

なんだかそれを千年公が批判したように感じて・・。

俺・・もしかしてちょっと苛立ってる?


「ティキぽんは、を気にいってるんですねぇ。」

「そうなんすかね。」


確かにのそばにこの数日いた。

決してのそばにいなさいとは千年公に言われてはいない。


「花嫁にひかれるのがノアの性。」

「俺は別に」

「しかし、ですからね。彼女の魅力でしょう。」


最初にに惹かれた思いも間違いではない。

でも、それと似た思いがここ数日どんどん強くなっている。


「わからなくもないですよ。私の場合、娘というような親愛に近い形ですがねv」

「傍からみて、俺がのこと好きなように見えますか。」

「おや、好きじゃないんですか?」

「・・・・・。」


こりゃ認めるしかないか。

悪い気持ちは全然ないし。


「俺、本気でいっていいですか。」

「吾輩は止めませんよ。」


笑った千年公に俺も笑い返す。






「なあ、。」

「ティキ、何?」

千年公の庭の花に水をやっているにむけて言葉をかける。

本来召使の悪魔がやっていることをは率先して始めた。


は好きなやつとかいるか?」

「?!」


は手から落ちた如雨露を急いで持ち直す。

新鮮な反応が面白い。


「突然なっ何??」

「それで答えは??」

「顔近い・・。」


こうして近づけばが顔を赤くして照れる。


「好きな人は・・いるよ。」

「そっか。」


ま、当然の反応だよな。これぐらいの年齢になれば

好きな奴ぐらいいるだろう。

その人物を思い浮かべているのかは幸せそうな顔をしている。

それを見て少し苛つく。


「そいつと付き合ってんの?」

「まさか!逆だよ。振られたんだ。」


苦笑に表情をかえ、俺から視線を外しはもう一度水をあげなおす。

に見えない表情で良かった。

俺はきっとすごく驚いた顔をして、そして今はきっと

そう・・には見せられない笑みを浮かべていただろう。

水をあげ終わって、咲いているバラには触れた。

それを俺は摘み取る。


。」


とげがあるから、ポケットのハンカチで茎をくるみ、に渡す。

『女性にばらを渡す際には気をつけないとね。』とかなんとか、

シェリルが一方的に俺に教えたやり方だ。

役に立つもんだな。


「ティキそんなよかったのに・・。でもありがとう。」


その笑顔に惹きこまれる。

頬に触れるとは少し驚いて体を震わせる。

慣れてない反応が初々しい。


。」

「?」

「俺をの恋人候補にいれてくれる?」

「?!」

「俺、のことが好きみたいだからさ。」

おでこにキスをして俺が微笑むとはそのまま固まってしまった。

顔自体は綺麗だが、こういう様子のはかわいいと思う。


「じゃ、俺はこれから千年公に呼ばれてるんで行くから。」

「あっ・・行ってらっしゃい。」

「行ってきます。」






「ティキぽん何かいいことでもありましたかvv?」

「まぇね。なぁ、千年公、これから楽しくなりそうだよ。」

「そうですか、では吾輩も楽しみにしていましょうv」

そして俺はに触れた右手に口付けをした。